グローバルな社会になるにつれて、英語を話せることの重要性は増してきました。
これからの日本人は英語を話せないと世界の進み方に取り残されてしまうとの危機感から、ビジネスマンはこぞって英語を学び、国も英語教育改革に乗り出しています。
しかし実際には世界のビジネス市場で英語を完璧に話せる必要は無く、「グロービッシュ」というものを使えれば良いという考え方もあります。
この記事ではグロービッシュとは何かということについて簡単に紹介します。
英語に代わる新しい世界の共通語「グロービッシュ」
グロービッシュとは一言で言うとシンプルな英語です。
「結局英語じゃん」と思われるかもしれませんが、ネイティブの英語話者が使うような難しい単語や文法などを一切使用せずに、単純な英語で話せばいいじゃないかというのがグロービッシュの考え方です。
例えばnephew(甥)という単語はthe son of my brotherと表します。
The birth of my son brought great happiness to our family.
であれば、
Our family was very happy when my son was born.
と簡単に表現されます。
グロービッシュは単語も文法も中学校レベル以下で習得可能
グロービッシュで必要とされる英単語数
グロービッシュに必要な単語数は1,500語と言われています。
中学校卒業時の目標として文部科学省が設定している英語力は英検3級で、その合格に必要な語彙数は2,000語以上と言われています。
つまり、中学校までは英語が得意だったという人であれば、グロービッシュに必要とされる英単語はクリアしていると言えます。
グロービッシュで使われるメインの文型は第3文型
グロービッシュの文法も簡単なものだけに限定されています。
中学校で英語には第1文型から第5文型まであることを習ったと思いますが、グロービッシュでは主に第3文型までを多用します。
- 第1文型:S+V
- 第2文型:S+V+C
- 第3文型:S+V+O
この3つだけです。
下記の第4文型と第5文型はあまり使われません。
- 第4文型:S+V+C+O
- 第5文型:S+V+O+O
さらに、現在完了進行形や仮定法などの難しい文法事項も使わないのがグロービッシュです。
誰にでも分かりやすいシンプルな英語がグロービッシュのメインコンセプトなので、難しい英単語や文法は使わないのです。
つまり、中・高と英語を6年間学んだ経験があるだけですでにグロービッシュを使えるということになります。
グロービッシュは国際社会におけるスタート地点
そもそも国際社会においては、異なる言語を話す人とコミュニケーションを取れることはスタートラインに立つ前提条件でしかありません。
実は、流暢な英語力は、直接的にビジネスの利益につながるものではないのです。
もちろん流暢な英語ができる方が格好いいですが、お互いにきちんと誤解なく意思疎通ができれば、基本的なビジネスは成り立ちます。
そうゆう意味では、ビジネスと同様に投資対効果で英語学習を考察すると、完璧な英語を習得するために、多大なお金と時間を使いすぎることは、投資効率がよくないのです。
投資効率を考えると、グロービッシュ非常に優れており、この点から日本でもよく知られる考え方になりました。
グロービッシュはノンネイティブ同士が意思疎通をするのに最適!
英語を母語としている人の割合は、世界人口のわずか20%くらいと言われています。
各国の大企業はすでに国内を飛び出して世界全体をビジネスの主戦場にしていますので、グローバルなビジネス社会でも、実は英語を母語としている人の割合は、決して多いわけではないでしょう。
外国人=英語ができるというイメージを持ちがちですが、大多数の外国人はノンネイティブなのです。
違う母語を持つ人同士がコミュニケーションを取るために考え出されたツールがグロービッシュですので、グローバル社会が求めるニーズにぴったりマッチしています。
それぞれ違う母語を持った人々がグロービッシュを知っているだけでコミュニケーションを取れるわけですからビジネス効率は非常に高まります。
グローバルビジネスでグロービッシュはどこまで通用するのか?
日本の学習指導要領的によると、中学卒業程度の英語力でグロービッシュが習得できることになります。
では、グロービッシュさえできれば国際社会に出てグローバルにビジネスができるということなのでしょうか?
実は、残念ながらそうとは言い切れません。
大きな問題点として考えられることは、英語ネイティブの人とのコミュニケーションを取る場合には、グロービッシュだけは通じないことがあります。
英語ネイティブの方はグロービッシュを理解できますが、グロービッシュレベルに合わせて英語ネイティブの人が話してくれない場合、グロービッシュの人は英語ネイティブの人が話している内容を理解しきれないという問題があるのです。
グロービッシュの使用目的はノンネイティブ同士でのコミュニケーション
ではグロービッシュが役に立たないのかというと、そうではありません。
そもそも、グロービッシュの発案者であるャン・ポール・ネリエールさんは、グロービッシュの使用目的をノンネイティブ同士の会話としています。
実際グロービッシュは、ネイティブとノンネイティブ間よりも、ノンネイティブ同士の方が、グロービッシュでのコミュニケーションの方がよく取れていたと語っています。
英語ネイティブの方にとっては、1,500語の英単語に限定し、簡単な文法と発音で形作られた英文では、あまり話せないのでしょう。
これは我々日本人が、片言の日本語だけで話そうとすると難しいのと同じです。
グロービッシュ普及における課題
グロービッシュを普及されるためには、ノンネイティブが学習することも大事ですが、ネイティブの方やノンネイティブの英語上級者も同様に学ばないといけないということがあります。
ネイティブの方がグロービッシュのレベルに合わせて英語を話してくれないと、グロービッシュは真の意味での国際共通語にはなりえないのです。
しかしこれは英語ネイティブや英語上級者の方々による、ノンネイティブに対する「おもいやり」に大きく依存されます。
特にノンネイティブの英語上級者は、一生懸命頑張って勉強した英語を、「わざと簡単に話す」ことにプライドが許さず、中々現実問題としては難しいことでもあります。
グロービッシュが抱える課題
グロービッシュは、少ない英単語数で簡単な表現ができる半面、単調かつ単純な表現でしか意味を伝え合うこができません。
そのため、比喩表現や文化に基づく格言などは理解してもらえないので、これらを用いたりすると話が通じなくなってしまう恐れがあります。
また、相手を笑わせようとして言うユーモアや冗談も、ノンネイティブ同士のグロービッシュでは理解されないどころか、ブラックユーモアは悪口として受け取られてしまうリスクがあります。
グロービッシュでのコミュニケーションは、機知に富んだやりとりもなく、文字通り中学生レベルのやりとりです。
相手の文化や人柄を知るには、単調なコミュニケーションでは不十分なところももちろんあります。
そのような言語を使うことが、人間同士のコミュニケーションとして良いことかどうかという点を考えないといけないのも、グロービッシュの抱える課題の一つと言えるでしょう。
まとめ
グロービッシュのメリットとデメリットを紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
ノンネイティブ同士が世界中でコミュニケーションを取ることができる画期的なコミュニケーションツールですが、ネイティブはなかなかグロービッシュで話しかけてくることはありません。
英語ネイティブの方とのコミュニケーションを重視するとなると、やはり伝統的な英語を勉強する必要性はなくなることはないのではないでしょうか。
一方でお互いがノンネイティブの場合、グロービッシュが非常に有効なツールであることは間違いありません。
完璧な英語の習得を目指すと途方もない大きな山の頂きを目指す感覚になり挫折しそうになるのであれば、小さな頂きとして、まずはグロービッシュの習得から目指すと英語の勉強も区にならなくなるでしょう。しかも、将来的に英語をマスターした際にも、グロービッシュは大いに役立ちます。
TPOに合わせてグロービッシュを使えることは、相手に合わせて英語を使い分けることができる、思いやりのある人になります。
真のコミュニケーションは、相手との意思疎通にあります。
自己の英語力を誇示することではなく、相手に合わせて英語を使い分けることができる人が、真のグローバルパーソンとも言えるでしょう。
最終的にはネイティブレベルの英語の習得を目指すにしても、グロービッシュを学んでおくことに損はありません。
これから英語を勉強する方には、まずはグロービッシュを習得し、その後グロービッシュに磨きをかけてイングリッシュを習得する、という2段階戦法で英語学習計画を立ててみてはいかがでしょうか。