幼児期の英語教育が注目を集めています。
少子高齢化によって日本の国内経済の縮小は避けられず、生き残りをかける企業が海外に活路を求めるグローバル社会の中で、英語を使いこなす能力は必須だと考える親御さんが多いからでしょうか。
特に,幼児期においては言語の習得が大人よりも楽にできると考えられている背景もあり、幼児への英語教育市場は賑わっているように見えます。
中でも時間のない大人にも人気のあるスピードラーニングに代表される「聞き流し」タイプの英語教材は、自宅でできる簡単さと費用が教室タイプの商品に比べて安いことから,よく話題に上がる教育法です。
幼児期に英語のシャワーを浴びせることで,ネイティブが英語を習得するのと同様の展開で自分の子供にも英語を習得させることができると考えている親御さんが多いことも『聞き流し英語勉強法』が注目される理由でしょう。
今回はこの聞き流しタイプの英語教育を幼児期に使用することについての是非について考えていきたいと思います。
聞き流しタイプの英語リスニング教材の効果的な使用法
まだ母語である日本語を十分に習得していない時期に、CD音源による英語音声を聞き流すことを実施して,実際に英語を習得できるということを科学的に検証した事例はないようです。
したがって幼児期に一日中近くで英語を流すだけで,英語を習得できるようになると期待しすぎることはしないほうが良いでしょう。
しかし、英語のrとlの発音などの音を聞き分ける感性については、幼児期は非常に鋭敏であると言われていますので、将来的に英語特有の「音の聞き取り」で苦労しなくなることへの期待値はあります。
子供は、幼児期は周りの音に対して何が必要な音で何が不要な音かの判断を自主的に意識して行うことができません。
毎日お世話をしてくれる両親の話す言葉は当然必要な音として認識されますので、子供も積極的に理解しようとします。
その結果,子供は日本語を習得できるわけです。
したがって聞き流すタイプの英語音源についても、子供に「不要な音」と判断されないようにするのが重要になります。
そのためには、毎日決まった時間に決まった量を聞かせるようにするのが良いでしょう。
3日に一回や1週間に一回など間隔が空いてしまうと、膨大な新情報に晒されている幼児の脳は、「不必要な音」として認識されてしまう可能性があるのです。
英語学習のためにはリスニング音声だけではなく映像とセットの方が学習効果は高い
音声は言語習得の重要な一側面に過ぎません。
上述では聞き流しタイプの英語教材をより効果的に使用する方法として定期的に聞かせることをあげましたが、実際にこれで習得できるようになる可能性があるのは英語の音声面についてのみになります。
発音やイントネーションを理解することは英語を習得する上で非常に重要な側面ですが、言語は音声面と内容面を両立して習得することが最も効果的です。
音が分かっても,その音が何を意味しているのかが理解できなかったら,学習効果は半減してしまいます。
私たち日本人が日本語を習得できたのは,日本語の音声と,それが表す意味とが結びつきながら学習できたからです。
幼児が英語の音声の意味を理解するためには,聞かせるだけではなく,そのストーリーの内容を映像として捉え,理解することができるとより効果的になります。
言語をまだ理解していない幼児は,聞いているだけではまだストーリーを理解することは出来ません。
子供に読み聞かせを行うときに,ただ単に朗読するよりも、絵本で絵を見せながら読み聞かせするほうが子供の理解が深まるのと同じです。
おすすめは海外の幼児向けアニメなどの映像メディア
英語も同様で,幼児に英語を理解させるためには,少しでもその音声が何を表すのかと一緒に理解した方が良いです。
そこでおすすめするのは海外の子供向けアニメなど、音と一緒に意味を視覚的に理解できるメディアを上手く活用することです。
アニメなどは幼児期にまだ言葉がわからない段階でも子供は面白がって見ますよね。
海外のアニメも同様で、英語がまだ完全にわからない幼児にもストーリーが理解できるように,映像が非常にわかりやすく製作されています。
よって,英語が理解できなくても,幼児期の子供の興味をそそり,言葉が分からないなりにある程度内容を理解できるものになっています。
子供は面白いと興味を持ったものに対しては好奇心旺盛に知りたがります。
それは海外の言語であっても同じですので、少しでも言葉と意味を結びつけながら理解させるためには、映像と音声をセットで与えることが重要になります。
例えば,まだ日本語でも「猫」という言葉を覚えていない幼児に、「猫はcat」だよ、と教えても、どこまで正確に理解出来るかはわかりません。
しかし、猫の映像を見せて,「This is a cat」とか「これはcatだよ」と教えれば、catの意味を正しく習得できるようになるでしょう。
最も重要なことは英語に嫌悪感を持たせないこと
幼児期の英語教育で最も重要なことは、子供が英語を嫌いにならないようにすることです。
英語を嫌いになる状況として代表的な例は,子供が両親に怒られながら無理やり座らされて勉強するような経験と英語が結びついたような場合があげられます。
学校教育の新課程では小学校3年生から英語教育が始まりますので、そのときまでに英語に対して子供がマイナスイメージを持たないように、ゆったりとした気持ちで英語に慣れ親しむことを教えてあげるのが良いのではないでしょうか。
英語の学習方法として「聞き流し勉強方法」を試してみるにしても、何か別の方法を試してみるにしても、この時期の子どもに無理強いは禁物です。
まとめ
幼児段階の子供への英語「聞き流し」教育の効果と是非について考えてきました。
幼児期の子供は周りのものに興味津々ですので、何か英語を意味のある音として捉えさせることができたらよいのですが、なかなか聞き流すだけでは大きな効果を期待することはできないと思います。
しかし、英語をBGMのように流しておくことは,お金もあまりかからないですし、やってみて毒になるようなこともありません。
「ちょっと興味を持ってくれたらいいな」くらいの軽い気持ちではじめてみることはプラスにこそなれマイナスにはならないので、過度な期待をせずに試すのは良いでしょう。