子供に英語を学ばせたいと考えた時、それぞれのご家庭で目標や目指すゴールがあることでしょう。
「ネイティブのような発音で英語がペラペラになってほしい」
「大学受験のために小学生のうちから英語の成績を良くさせたい」
「子供も興味を持っているし、ちょっとでも触れてくれればいい」
保護者の考えは様々だと思います。
一番ハードルが高いのが「ネイティブのような発音で英語ペラペラになってほしい」というケースですが、この希望を持つ親御さんは少なくありません。
この記事では「ネイティブのような発音で英語ペラペラ」というのが、子供に身につけてもらいたい英語力のゴールとして適切なのかについて、英語教師の視点で考えることをご紹介します。
英語学習者の誰もが憧れる「ネイティブ英語」は練習すれば身につくのか!?
英会話教室に通えばネイティブ並の発音を身につけられるのか
日本人家庭で日本に住んでいる人が、ネイティブ並みの発音を身につけ、完璧な英語を話せるようになるのでしょうか。
講師が全員ネイティブの、某大手英会話スクール主催のセミナーで聞いた答えは「No」でした。
週に1,2回、1時間程度の英会話教室に通う程度では、一般的な日本人がネイティブ発音・ネイティブ英語を身につけようするのはかなり難易度が高く、手の届かない目標とのことです。
両親の内どちらかが英語のネイティブスピーカーであったり、子供をインターナショナルスクールに通わているなどの特殊な環境がないと、一般的には不可能だということでした。
英会話スクールのスタッフがハッキリ「No」というのは、英語教師の私としても一瞬ショッキングに感じたものですが、「確かにその通りだな」と感じる答えでした。
そもそも「ネイティブ並みの英語」とは何を指しているのか
英語を勉強するからには、「ネイティブ並みの発音を身につけたい」と考えるのは当然です。
でもそもそも、「ネイティブ英語」とは何を指すことなのでしょうか。
英語ネイティブとは、母国語として英語を使っている人たちを指しますが、英語を母国語とする国は、実はたくさんあります。
アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、この4か国だけ考えてみても、それぞれが地球上で遠く離れています。
そうなると日本語の方言と同じように、同じ「ネイティブ英語」でも、表す単語が違ったり、言い回しが違ったりするばかりではなく、もちろん、発音やイントネーションも違います。
一言でネイティブ英語と言っても、実にさまざまな種類があるのです。
実際、TOEICのリスニング試験では、アメリカ英語、カナダ英語、イギリス英語、オーストラリア英語(ニュージーランド英語含む)の4種類の発音が均等に使われています。
それぞれの国で学ばれる、それぞれのネイティブ英語
インディアン・イングリッシュ が アメリカンイングリッシュを超える
同じく、英会話教室のセミナーで紹介された話で興味深く聞いたのが、インディアン・イングリッシュ(インド英語)についてです。
インディアン・イングリッシュとは、インドやパキスタンなど南アジアの旧イギリス領インド帝国の地域で使用されている英語を指します。
そして、近い将来インディアン・イングリッシュを話す人口が、アメリカン・イングリッシュを話す人口を超すということでした。
インディアン・イングリッシュは「R」を強く発音するのが特徴で、例えばfortyの発音は「フォーティ」ではなく「フォルティ」といった具合に発音されます。
特徴が強いインディアン・イングリッシュは、上述の4地域の英語ネイティブの人でも聞き取りにくい場合もあるそうですが、インディアン・イングリッシュも立派なネイティブ英語の1つと言えるでしょう。
しかも人口の増加に伴い、今後はネイティブ英語として主流はとなる可能性は十分にあります。
この様に一口に「ネイティブ英語」といっても、ネイティブ英語は複数存在し、それぞれのネイティブ英語を話す人が英語でコミュニケーションを取り、世界で活躍しています。
日本語に方言があるように、英語もそれぞれの国で独自に発達した英語があります。
日本で学ぶ英語は、戦前はイギリス英語が中心でしたが、戦後はアメリカ英語が中心となったため、ついつい英語というとアメリカ英語を思い浮かべてしまいますが、グローバルな視点で考えると、必ずしも英語がアメリカ英語を指すとは限らないのです。
「英語には複数の英語ネイティブの各国において、それぞれに特徴があって当然だということをしっかりと認識しよう」というお話には、強く共感すると共に、これからの自分の英語教育方針も改めて見直す機会にもなりました。
これからの子供たちが必要とする真の英語力とは何か!?
2020年の英語教育大改革を発端に、日本でも小学校から英語授業が始まりました。
日本人の英語力を上げるための、過去最大とも言われる英語教育改革です。
2018年現在の学習指導要領では、子供たちの「生きる力」を育むという目標を持って作られていますが、なぜ、このような英語教育改革を行って子供たちに英語力を身につけようとしているのでしょうか。
大人になったら英語圏の国に住むことになるとか、ネイティブ英語を話す外国人が日本に溢れるからということではありません。
確かに、グローバル化の加速により、国境を越えて世界で活躍する子供たちも増えるでしょう。
しかし、世界に出ることなく日本で暮らしていても、英語が必要になってくると言われています。
事実、日本は人口減少などの原因から今の経済活動を維持するためには外国からの労働者を必要としているということで、2019年4月には「移民法」が成立する旨がニュースでも取り上げられています。
これまで日本はあまり多くの外国人を受け入れて来ていませんでしたが、外国人の流入の動きは今後も拡大していく見込みです。
特に、近隣のアジア諸国との交流は増えることが予想され、必然的にそのコミュニケーション手段は、英語になっていくと言われています。
それぞれが自国で身につけた英語でコミュニケーションをとること社会が、子供たちの将来現実化されると予測されているのです。
まとめ
英語学習者の誰もが憧れる「ネイティブ英語」。
これは一括りにすることができず、代表的なネイティブ英語だけでも、アメリカ英語、カナダ英語、イギリス英語、オーストラリア英語と4種あります。
ネイティブ英語には、実は様々な英語があり、他の複数の英語圏の例としてインディアン・イングリッシュをご紹介しました。
多くの人は「ネイティブ英語」に憧れ、ネイティブ並みの英語の発音が出来るようになることに固執している人が多いですが、英語の発音も実は様々であることを理解した上で、「生きていくため」に必要とされる英語力が何であるかをよく考えて、英語力を身につけていくのが良いでしょう。
こちらの記事では、日本人がしてしまいがちな、「英語に対する消極的な態度と、お手本にしたい姿」を例に挙げ、「英語を学ぶ日本人が目指すべきゴール」についてご紹介しています。
ぜひ併せて読んでみてください。