自分の子供に英語を話せるようになってほしいけど,文法や単語の暗記など、地道な勉強を苦手とする子供は多いものです。
石川遼選手が「聞き流すだけで話せるようになる」と宣伝しているスピードラーニングは、そんな方にとても魅力的に映ります。
この記事ではスピードラーニングのメリットとデメリットを踏まえたうえで,実際に英語の勉強効果をあげるのに役立つ、スピードラーニングの有効な使い方を提案します。
英語は「聞き流す」だけでは身につかない?
エスプリラインが提供しているスピードラーニングでは、「聞き流す」だけで自然と英語が話せるようになると宣伝しています。
しかし当然ながらそれを真に受けて本当に「聞き流す」だけでは英語を話せるようにはなりません。
言葉は理解しようとして聞かない限り理解できませんし,伝えようと思って話さない限り伝わらないからです。
よく赤ちゃんが言葉を理解できていないにもかかわらず自然に話せるようになることから,スピードラーニングも同じように考えられることがありますが,それは違います。
赤ちゃんは目が覚めている間ずっとまわりの大人が何をコミュニケーションしているのか五感を研ぎ澄ませて聞いていますので,一日数分BGMのように聞き流して英語を習得しようとしている大人とは違います。
なぜ子供の学校教育でスピードラーニングが導入されないのか?
学校教育というものはああ見えて頭の良い人たちが科学的根拠をもとに制定した学習指導要領にそってカリキュラムが組まれています。
スピードラーニングに信頼に足る科学的根拠があれば、学校教育はもちろんのこと英会話教室や塾でも導入するでしょう。
しかし実際には子供が通う小学校でスピードラーニングは導入されていません。
それは、聞きながす「だけ」では英語学習に不十分であると考えられているからでしょう。
もちろん赤ちゃんのように母語である日本語を習得する前で,英語圏の環境と同じくらい大量の英語を浴びせれば習得できるという説もありますが,ほとんどの子供は小学校入学までに母語が日本語だと自覚するくらいには日本語を習得してしまっています。
母語が日本語となってしまった子供の場合、聞き流す「だけ」で英語を習得するのは困難であり、それ故小学校でもスピードラーニングを英語教育の主体とはしていません。
スピードラーニングを効果的に使うにはどうすればよいか
子供が学ぶのは母語としての英語ではなく第二言語としての英語
すでに母語を日本語として習得した10歳以降くらいからのは子供は,残念ながら聞き流すだけでは英語は身につきませんので,やはり英語は体系的に学ばないとなりません。
つまり,文法や単語を覚え、きちんと語学を理解しながら、知識や表現を拡げていくということです。
赤ちゃんは母語を習得するのに一生懸命「勉強」せずとも聞いているだけで習得していると思われがちですが、実際には何年もかけて聞いて勉強しているのです。
母語を習得していない状態の赤ちゃんに比べて,英語を第二言語として学ぼうとする年齢の学習者は認知能力において圧倒的に有利です。
赤ちゃんが母語を習得するのにかける時間と同じくらいの時間かて勉強すれば、文法や単語を基礎として4技能を鍛えていく方法でも,英語を習得することは十分に可能です。
英検準一級くらいの難易度の高いレベルの試験にも、4技能を習得するためにモチベーションを保って学習すれば、子供でも合格は可能です。
スピードラーニングでの英語学習は意味がない?
ではスピードラーニングは意味がないのかというとそうではありません。
スピードラーニングで聞く「だけ」で英検準一級レベルになることは確かに困難ですが、4技能を鍛える補助的な教材としてスピードラーニングは優秀です。
スピードラーニングのメリット①「手軽さ」
スピードラーニングは第二言語学習におけるリスニング教材としては優秀な点があります。
スピードラーニングのメリットとして,まずは手軽さが挙げられます。机や筆記用具,参考書等が不要であり,教材は「音源」のみです。
そのため通勤中や家事をしている間など,空いた時間に「ながら学習」することができるのです。
ただし効果的に英語を学習したいと思うのであれば,そのときには「聞き流す」だけではなく,英語のフレーズを理解しよう意識して聞くのが大事です。
英語のフレーズを聞き取るためには,最低限の文法知識や単語知識も必要です。
中学生レベルの英文法ができれば大丈夫ですので、スピードラーニングを導入する場合は、まずは中学3年生までの英文法を習得しておくと効果的です。
そのため子供にスピードラーニングを使わせる場合には,基礎的な英文法や単語力がついてからにしたほうが効率的でしょう。
スピードラーニングのメリット②「ストーリー性」
スピードラーニングのリスニング教材は,ストーリーが展開する形の内容ですので,意味が分かればおもしろく聞き続けることができる構成になっています。
最初は一生懸命聞いても,後に続く日本語を聞くまで意味が分からないことも多いでしょう。
しかしあとから流れる日本語でストーリーを確認しながらついていくことによって,分からない単語の類推にもつながります。
聞き流すだけで英語が身につくと宣伝しながら,聞き流すだけにならないようにリスナーを惹きつける工夫がされている教材とも言えます。
無意識にBGMの様に聞き流すのと、意識して傾聴するのでは学習効果には雲泥の差が生じます。
やはり,大事なことは流れてくる英語を理解しようとして聞く態度を持つことです。
まとめ
子供に英語を勉強させたいと考える時,魔法のように効率的に習得できる方法を探してしまうのは親心として仕方のないことです。
その流れの中で,スピードラーニングの「聞き流すだけ」という言葉は本当に魅力的です。
しかし,スピードラーニングの正しい使い方は,「聞き流すだけ」ではなく,基礎的な文法や単語の知識をもとに「理解しようとして聞く」ことです。
そのため「聞き流すだけ」という宣伝文句の通りにするのではなく,「きちんと聞く」勉強法で取り組み、続けてみることが重要です。
子供に英語を習得させようとする際には、まず中学3年生レベルまでの英文法の知識を習得させることを先決し、その上スピードラーニングを活用するのが良いでしょう。
スピードラーニング「だけ」に頼った英語勉強ではどうしても効率が悪く、英語の習得に時間がかかってしまうことは否めません。
聞き流す「だけ」ではなく、聞く勉強「を」する、という意識で取り組むのが、スピードラーニングの効果的な活用方法なのです。